中国・日本の十二薬叉神将

敦煌莫高窟第二巻より 薬師浄土変相図 隋代

描かれる十二神将の共通点は跪き、両手に燈明か宝珠を持ち、上半身裸か、天衣をまとい、宝冠を被り、頭光を負っている。第四三三窟のものは瓔珞も着けている。隋代の十二神将は天人や菩薩の形で武将姿は見えない。  

敦煌第112,220窟 唐代

甲冑が多くなるが、武器を持たず合掌し、柔らかい表情も多い。

エルミタージュ美術館 薬師如来像

十二世紀末から十三世紀にかけてカラ・ホト[i]で制作されたタンカ[ii]の薬師如来像画像がある。エルミタージュ美術館が所蔵するもので、コズロフが将来したもの


[i] カラホト(黒水城) 内蒙古自治区アラシャン盟エチナ旗にある幻の王国西夏王国の遺跡で、カラはモンゴル語で黒く恐ろしいところ、ホトは城という意味である。西夏王国は漢字をもとに作られた独自の西夏文字を持ち仏教を国教とする繁栄した王国であったが、チンギスハーンに滅ぼされてから、忽然と歴史の表舞台から姿を消してしまった。カラホトは、東西に約四四〇メートル、南北に約三七七メートルの不規則な四角形をしている。東西にそれぞれ門があり、城壁内部はひとつの町を構成していた。城内には仏教人寺院の遺跡が無数にあり、西夏王国では仏教が特に尊ばれていた。https://www.arachina.com/attrations/silkroad/yizhi/heishuicheng.htm

[ii] タンカ主にチベットで仏教に関する人物や曼荼羅などを題材にした掛軸

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AB

中央の薬師三尊像を七仏をはじめとする三十七尊が取り囲んだ図であるが、十二神将は下辺の二段に描かれている。最下段に八体、その上の段に四体が描かれているるが、上段の神将は四天王を挟んで左右に二体ずつ分かれる形になっている。みな坐像で、腰布をまとい、上半身には胸飾りや紐状の飾りを着けるだけのほとんど裸形の像で、宝冠を着け、頭光と身光を負っている。身体の色は黄、赤、青、緑などに塗り分けられ、持物としては斧、剣、 棒、槍、弓などを持っている。持物を持たずに合掌するものや印を結ぶものもいる。

中央に薬師三尊像が大きく描かれ、画の上辺に七仏が描かれる。画の下辺に四天王、梵天、帝釈、三菩薩、僧を描いた段、さらにその下に十二神将を描いた段がある。十二神将は腰布(褌に見える)、胸飾り、紐状の飾りをまとった裸形の坐像である。宝冠を着け、頭光と身光を負っている。身体の色は青、白、緑、黄、肌色に塗られ、持物は棒、弓、斧、.剣?、旗?などである。また何も持たずに合掌する神将、印を結ぶ神将もみられる。 

 薬師寺金堂三尊は初唐の影響が強いとも言われており、以上のような中国の例から、台座の像も武器を持たない座像で、裸形、褌姿を引き継いだのではないだろうか。

その後、経軌{i}で持つ武器などが規定され、日本の十二神将は甲冑姿になるが、それでも長く十二神将の一部に甲冑姿でない像が残ったのは、この名残かもしれない

[i]密教の経典と儀軌のことを経軌といい、儀軌は仏菩薩および天部などの造像、念誦、供養に関する儀式規則やそれを期した典籍を言うが、密教では梵語のカルパ、ヴィディ(漢訳で儀軌)と呼ばれる儀軌を説く経典を制作していき、諸尊に悟りの示し方や誓願に違いがあることで多種の儀軌が生じた。特に、日本の天台密教では経軌を重視する傾向がある。(『世界宗教用語大辞典』など)

日本の十二神将

  武将の姿であるが、中に変わった神将がいる

興福寺十二神将
興福寺十二神将
摩虎羅大将
摩虎羅大将

巻き毛、牙、腕釧  ほかに裸足の大将も

この十二神将は興福寺東金堂の須弥壇上に安置、東金堂の薬師如来像の台座に張り付けられていたと考えられる。治承年間の再興像の可能性が高いが資料はない。

「魅惑の仏像 新薬師寺」
「魅惑の仏像 新薬師寺」

日本に現存する最古の十二神将像は新薬師寺の十二神将で天平年間(七二九~七四九)乃至それ以降に制作されたとみられる。薬師寺薬師三尊は新鋳説でも養老から神亀ころ(七一七~七二九)の制作と考えられているので、もし台座の十二体が十二神将であれば、現存する像の中では最古の十二神将像となる。新薬師寺の十二神将はすべて甲冑姿である。 

十二神将像は新薬師寺のように立像で薬師如来の周囲に配されているものが多いが、薬師如来の台座に張り付けられていたり、彫り込まれているものもある。前述のとおり興福寺の板彫りも東金堂薬師如来の台座に張り付けられていたと考えられている。(高さ100から89㎝)。東寺では薬師如来坐像の台座を十二神将が取り囲んでいる。

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